- アヒフラワーは Buglossoides arvensis というムラサキ科の植物
- 種子油にオメガ3のALA(α-リノレン酸)とSDA(ステアリドン酸)を含む
- SDAはALAからEPAへ向かう代謝経路で、ALAより一段階先に位置する
- 犬の研究ではSDA摂取で赤血球と心臓組織のEPAが増えたが、DHAは増えなかった
- 研究用量と商品1枚の配合量は同じではなく、製品の効果を保証する結果ではない
アヒフラワーオイルとは
アヒフラワーオイルは、ムラサキ科の植物 Buglossoides arvensis の種子から得られる油です。植物由来のオメガ3脂肪酸であるALAに加え、SDAを比較的多く含む点が注目されています。
「アヒフラワー」という名前はまだ日本では広く知られていませんが、原料植物と成分を分けて見ると理解しやすくなります。花そのものを食べるのではなく、食品や製品では主に種子から採った油、または加工した種子が使われます。
脂肪酸の割合は、品種、栽培条件、搾油・精製方法、製品規格で変わります。研究で示された特定の油の組成が、すべてのアヒフラワー製品にそのまま当てはまるわけではありません。
アヒフラワーオイルに含まれる主な脂肪酸
α-リノレン酸。植物油や種子に見られ、体内でより長鎖のオメガ3へ変換される出発点です。
ステアリドン酸。ALAからEPAへ至る経路で、ALAの次の段階に位置します。
γ-リノレン酸。アヒフラワー油に含まれ得るオメガ6脂肪酸の一つです。
アヒフラワーは「オメガ3だけの油」ではありません。オメガ6のリノール酸(LA)やGLAなども含みます。商品を見るときは「オメガ配合」という言葉だけでなく、原料名、配合量の表示、食事全体との関係を確認しましょう。
ALA・SDA・EPA・DHAの違い
ALAとSDAは炭素数18の植物由来オメガ3です。体内では酵素の働きにより、複数の段階を経てEPAなどへ変換されます。概略を単純化すると次のようになります。
植物性オメガ3
ALAの次の段階
さらに先にDHAへの経路
SDAは、ALAからSDAへ変換する最初の段階をすでに通過した脂肪酸です。そのため、ALAだけを含む油とは体内での利用経路が異なります。ただし、SDAがそのまますべてEPAになるわけではなく、さらにDHAまで十分に変換されるとも限りません。
「植物由来だから魚油と同じ」ではない
魚油は一般にEPAやDHAをあらかじめ含みます。一方、アヒフラワーオイルの特徴はALAとSDAを供給し、体内の代謝を経てEPA側へつながる点です。出発点も脂肪酸の構成も同じではありません。
犬を対象にしたSDA研究で分かったこと
2007年に学術誌「Lipids」に掲載された研究では、成犬の雄ビーグルにSDAを1日あたり体重1kgにつき21mg、64mg、193mgの3段階で、最長12週間与えました。比較群にはEPAまたは高オレイン酸ヒマワリ油が使われました。
研究で報告された主な結果は次のとおりです。
- 赤血球のEPA量は、SDAの摂取量に応じて増加した
- 心臓組織のEPA量も、高用量SDA群で増加した
- 赤血球・心臓組織のDHA量は変化しなかった
- 組織EPAを増やす効率は、摂取したEPAとの比較で20〜23%だった
この結果は、SDAが犬の体内でEPA側へつながる植物由来オメガ3源となり得ることを示しています。一方で、EPAを直接摂る場合と同じ効率ではなく、DHAの増加も確認されませんでした。
犬の研究から「言えること」と「言えないこと」
| 研究から言えること | 研究だけでは言えないこと |
|---|---|
| 研究条件下で、SDA摂取後に組織EPAが増えた | アヒフラワー入りおやつを食べれば必ず同じ変化が起きる |
| 反応には用量依存性が見られた | すべての犬種・年齢・健康状態で同じ反応になる |
| DHAは増えなかった | 魚油やEPA・DHAそのものと同等である |
| 最長12週間の研究データがある | 病気の治療・予防、皮膚・関節などの効果が証明された |
特に重要なのは、研究で使ったSDAの用量と、市販のおやつ1枚に含まれる量を同一視しないことです。製品に成分を配合している事実は説明できますが、配合だけから特定の健康効果を約束することはできません。
亜麻仁油・魚油と何が違う?
| 原料 | 主に注目されるオメガ3 | 読み方のポイント |
|---|---|---|
| アヒフラワーオイル | ALA・SDA | SDAがALAより一段階EPAに近い。EPA・DHAそのものとは異なる |
| 亜麻仁油 | ALA | 植物性ALAの代表的な供給源。EPAへの変換には複数段階がある |
| 魚油 | EPA・DHA | 長鎖オメガ3を直接含む。品質、酸化、由来、配合量も確認する |
どれか一つが常に優れているのではなく、目的と食事全体によって選択は変わります。治療目的でEPAやDHAの量を管理する必要がある場合は、おやつではなく、獣医師が示す食事や製品を優先してください。
アヒフラワー配合の商品で確認したい5項目
- 原料の形種子油、種子、または両方を使っているかを確認します。
- 脂肪酸の種類ALA、SDA、GLAなど、何を特徴としているかを見ます。
- 配合量の情報効果を比較したい場合は、具体的な量が分からなければ判断できません。
- 製品全体の用途おやつ、主食、サプリメントを区別し、給与方法を守ります。
- 保存方法油脂は酸化の影響を受けるため、開封後の密閉、高温・直射日光を避けるなど表示どおりに扱います。
オイルと微粉化種子、2つのアヒフラワーを配合
Lifeplus Pets ピーナッツバター ビスケットは、アヒフラワーオイルと微粉化したアヒフラワー種子の両方を配合した犬用の間食・補助食です。
商品情報ではアヒフラワー由来の植物性オメガ3・6を特徴としていますが、1枚を与えることで特定の疾病や症状が改善することを示すものではありません。おやつとして適量を守り、主食には愛犬に合う総合栄養食を与えてください。
よくある質問
アヒフラワーとは何の植物ですか?
学名を Buglossoides arvensis といい、ムラサキ科に属する植物です。主に種子から油を得ます。
SDAとは何ですか?
ステアリドン酸というオメガ3脂肪酸です。ALAからEPAへ至る代謝経路で、ALAの次の段階に位置します。
アヒフラワーオイルは魚油と同じですか?
同じではありません。アヒフラワー油はALAとSDAを特徴とし、魚油は一般にEPAとDHAを直接含みます。
犬にアヒフラワーを与えるとDHAも増えますか?
紹介した犬の研究では、赤血球と心臓組織のEPAは増えましたが、DHAは変化しませんでした。
アヒフラワー入りおやつで皮膚や関節が良くなりますか?
本記事で紹介した研究は組織中の脂肪酸変化を調べたもので、商品による皮膚や関節の改善を証明するものではありません。健康上の悩みは獣医師へご相談ください。
アヒフラワー入りなら多く与えてもよいですか?
いいえ。成分にかかわらずおやつは間食です。商品表示と愛犬の1日の摂取カロリーに合わせ、主食以外を合計して10%未満を目安にしてください。
参考資料
- Harris WS, et al. Stearidonic acid increases the red blood cell and heart eicosapentaenoic acid content in dogs. Lipids. 2007.
- Prasad P, et al. Physico-chemical characterization and fatty acid profile of Buglossoides arvensis seed oil. J Oleo Sci. 2019.
- Lefort N, et al. Consumption of Buglossoides arvensis seed oil and tissue n-3 fatty acid content: phase I human trial. J Nutr Sci. 2016.
本記事は脂肪酸と研究に関する一般情報を提供するもので、特定製品の効果や疾病の治療・予防を示すものではありません。持病、服薬、療法食、脂質摂取について心配がある場合は、かかりつけの獣医師へご相談ください。
